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放課後には必ず体育館に顔を出す。

試合には必ず旗とユニフォームを着用し応援する。

抜け駆けはゆるされない。



そういった規則のもと、流川くんを応援している流川親衛隊。

そんな彼女たちを見ていると、すごい辛かった。

自分の姿を見ているようで。


隊には属していなくても、流川くんを想う気持ちは私も同じだった。



でも、彼女たちと同列に見られるのはとてもイヤだった。



私は、あの子たちとは違うのよ。

あんなにキャーキャーしちゃって、はしたない。



そう仮面をかぶったところで、中身はなんも変わらない。

彼女たちと同じだった。



容姿が整っていて

バスケのセンスは一流で

クールで


そんな理由で彼の虜になった。



高校に入っても、しばらくはその理由は変わることはなかった。






でも


流川くんがとても小さく見えたとき


私のそれまでの想いはどこかにいっちゃった。



キャーキャー騒いでいたのが、信じられないくらい。






関心がなくなったんじゃないの。


むしろ逆


関心ありすぎて、ありすぎて、ありすぎて・・・・


見るだけで苦しかった。


同じ空間にいるっていうだけで、胸が締めつけられて、他に何も考えられなくなった。


流川くんと話すときも

前は芸能人と話すように慌てふためいていたけど


いまは、声はうわずっちゃうけど、しっかり話せてると思う。

1語1語、聞き逃さないように

流川くんの言葉を漏らさないように






そうしたら

だんだん流川くんが私に対する態度を変えてきた?




他の子たちと同じように、障害物というようにしか見えてなかったのだろうけど

ちゃんと人間として流川くんの中で形作ってきたのかな。








こうして、部活終わってから一緒に帰れるなんてウソみたい。





マネージャーになって

居残り練習を手伝って


パス出しだって頼まれる回数も増えてきて



ボールをパスする瞬間どんな気持ちだかわかる?


私のこの気持ちまでも届くようにってパスしてるんだよ



だから、今日みたいに「送ってく」て言われたときは、気持ちがばれちゃったんじゃないかってドキドキしたの。

送ってくれるなんて、初めてだったから。









無言が続く帰り道―――


10月下旬の冷たい風が足元を通り過ぎていく。





家が目前に迫ってきて、私は大きく息を吐いた。


ここで流川くんともお別れか


流川くんは、今日はなぜか歩きだった。


「じゃ、じゃぁ、ありがとう」


せめて、挨拶くらいは目を合わせようと思って顔を上げた。


すっごい勢いで目が揺れている彼の目

「どしたの?」




返事はなく、無言のまま




「ん、じゃあね」

返事がなくてもしょうがないかと思って扉に手をかけた。


「おい」

背後からの声に振り向いた。


「おめーのこと嫌いじゃないから」


それだけ言うと、だーっと走り去った。


「嫌いじゃないって・・・」


二重否定?

嫌いの反対ってことでいい?


嫌いの反対・・・・


好き


ってこと?



や、でも、嫌いでもないけど、好きでもないってこともある。



でも、あの流川くんの態度って


どう見てもいい逃げ




「・・・・・・っ」



両手で口元をおさえた


それでも、声が少しもれた。





こんな形で流川くんの気持ちを知るなんて想像もしてなかった。



私のパスが伝わった・・・・。





fin









あとがき

流晴、山場です。
晴子ちゃんは流川にずっとアピールしているから、流川から気持ちを告げるっていうのはどうだろう・・・ということで書きました。ありがとうございました。




2005.2.6 UP

りょうこさんよりいただきました、とってもいい感じな二人のお話です。
こ、れ、は!!!流川から気持ちを伝え、て、る!!!!(挙動不審)
だーっ、と走り去った流川がとてつもなくかわいかったりして(きっと顔は真っ赤なんだ!妄想)
晴子ちゃんも幸せそうで、その様子が目に浮かぶようです。
りょうこさん、幸せそうな二人の作品をどうもありがとうございました!

りょうこさんの素敵HPはこちら >>> Pallacanestro

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