例えて言うなら、眠りにつく寸前のあの感覚。
一瞬クラリとめまいがしたかと思うと、そのまま沈んで。
「流川君。」
呼ばれて、足を止める。
さっきから体育館には二人だけ。会話もなく、一人でいるのと同じことだった。
それがそいつのほうから崩されて、俺は少なからず動揺した。
「・・・なに。」
こちらに来る気配。
気配しか感じられないのは、俺がそいつの方を振り返らないから。
「流川君。」
それでも振り返らない。
振り返ってそいつのことを真正面から見ることが出来ない。
後ろからは、真っ直ぐな視線がこっちに向いているに違いない。
ずっと前からそうだったから。
その瞳にどんな感情が込められているのか、なんとなく、ずっと前から、知っている。
だから俺は目を合わせられないでいる。
たぶん、そういうことだ。
「・・・んだよ。」
「ううん、なんでもないんだけど。ただ・・・、」
「ちゃんとこっちを向いて欲しいの・・・それだけ。」
いつかはこんな時が来ると思っていた。
向き合ったらその先は見えている。
きっと俺は、このままこの感覚に身をゆだねることしか出来ない。
目の前にいる、ただ一人の小さな人間によってもたらされるこの感覚に。
だったらもうあきらめて、沈んでしまえばいい。
いっそのこと、ふたり一緒に、眠りにつくように。
俺の目は、ゆっくりとそいつの瞳をとらえた。
ともに沈む
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2006.4.20
やっと自分の作品を飾ることが出来ました。
こんな感じの二人もいいかなーと思いつつ、仕上げました。
やっぱり流晴妄想するのは楽しいです。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
読んで下さってありがとうございました。